温故創新
支笏湖から流れ出る千歳川には「山線鉄橋」と呼ばれる橋が架かっています。
1908(明治41)年から1951(昭和26)年まで、王子製紙苫小牧工場と支笏湖畔、さらには千歳川沿いの王子製紙第4発電所(千歳市水明郷)までの延長約40㎞を結び、「山線」の愛称で親しまれた王子軽便鉄道(正式名称:王子製紙苫小牧工場専用鉄道)に使われていたもので、当初は木橋だったものが1924(大正13)年に現在の橋に架け替えられました。
この橋は北海道内に現存する現役最古の鋼橋で、千歳市の有形文化財に指定され、朱色に塗られたその姿は今では周りの景観に溶け込み支笏湖のシンボルとなっています。
当時、この山線には全長約8.2m、重さ約8.4tの小さな蒸気機関車11両が、軌道幅762㎜のレール上を発電所建設資材や木材などの輸送に当たり、その後一般客の乗車も許され、苫小牧と支笏湖双方の発展に寄与してきました。
当初アメリカからの輸入であった蒸気機関車は、後に3両がものづくり技術の集積地であった小樽で製造されています。
これらの歴史を見守ってきた山線は製紙業の歩みを物語る産業遺産として、山線鉄橋とともに2007(平成19)年、国の近代化産業遺産群33に登録されたほか、2018(平成30)年には山線鉄橋が選奨土木遺産に認定されました。
そして、現存する唯一の蒸気機関車(三代目4号機)は苫小牧市内の公園に今も大切に保存されています。
現在の支笏湖は、札幌市内から車で約1時間、新千歳空港から約40分という好立地でありながら、手つかずの自然と静かな水辺空間を保っており、この大自然は長い歴史を誇る温泉とともに他の観光地では味わえない魅力です。
明治、大正、昭和、平成そして令和の時代へ、技術がめまぐるしく進歩するなかで、この時期に改めて地域の歴史を振り返り、希薄になりつつある技術の記憶を残し、将来につなげていくことは意義深いことと考えます。
そこで、かつて王子軽便鉄道が敷設されていた苫小牧~支笏湖、それぞれの地域の歴史の中で、特に支笏湖の発展の礎となった山線の歴史をジオラマと鉄道模型と映像で再現し、その歴史的役割や先人たちの努力など、有形・無形の価値を現代に伝える展示施設として「王子軽便鉄道ミュージアム 山線湖畔驛」をここに開設いたしました。
温故創新とは
温故知新の「故(ふる)きを温(たず)ねて新(あたら)しきを知(し)る」の意から作った造語です。支笏湖と王子製紙の歴史
1857(安政4)年7月 | 松浦武四郎、石狩川から千歳川を経由し、支笏を探査 |
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1869(明治2)年8月 | 蝦夷地を北海道に改める |
1894(明治27)年12月 | 阿寒湖のヒメマスを支笏湖に移植 |
1898(明治31)年9月 | 水産庁さけ・ますふ化場支笏湖事業場開設 |
1907(明治40)年4月 | 王子製紙苫小牧工場水使用願いを村長に提出 |
1908(明治41)年8月 | 王子製紙苫小牧工場専用鉄道(通称 王子軽便鉄道:山線)運転開始 |
1910(明治43)年7月 | 王子製紙千歳川第1発電所送電開始 |
1910(明治43)年9月 | 王子製紙苫小牧工場操業開始 |
1915(大正4)年12月 | 支笏湖に丸駒温泉開業 |
1916(大正5)年3月 | 王子製紙千歳川第2発電所送電開始 |
1918(大正7)年5月 | 王子製紙千歳川第3発電所送電開始 |
1919(大正8)年11月 | 王子製紙千歳川第4発電所送電開始 |
1922(大正11)年4月 | 王子軽便鉄道(山線)一般乗客の利用開始 |
1923(大正13)年 | 湖畔橋が木橋から鉄橋に架け替え |
1925(大正14)年 | 支笏湖に動力遊覧船就航 |
1936(昭和11)年10月 | 千歳鉱山創立本格的開発に着手 |
1941(昭和16)年2月 | 王子製紙千歳川第5発電所送電開始 |
1949(昭和24)年5月 | 支笏洞爺国立公園指定 |
1951(昭和26)年8月 | 王子軽便鉄道(山線)廃止(バスへ切り替え) |
1953(昭和28)年4月 | 国立公園レンジャー配置 |
1954(昭和29)年9月 | 洞爺丸台風により支笏湖周辺の森林に大被害 |
1964(昭和39)年4月 | 千歳消防団支笏湖分団発足 |
1867(昭和42)年9月 | 北海道初の有料道路「支笏湖畔有料道路」完成 |
1972(昭和47)年2月 | 第11回札幌オリンピック冬季大会開催(恵庭岳滑降コース) |
1975(昭和50)年4月 | 支笏湖畔に温泉湧出 |
1977(昭和52)年7月 | 国設美笛野営場開設 |
1979(昭和54)年1月 | 第1回千歳・支笏湖氷濤まつり開催 |
1980(昭和55)年5月 | 支笏湖ビジターセンター開設 |
1992(平成4)年8月 | 第34回自然公園大会支笏湖で開催 |
1997(平成9)年11月 | 「山線鉄橋」リニューアルされ開通 |
2003(平成15)年7月 | 支笏湖ビジターセンターリニューアルオープン |
2006(平成18)年2月 | 支笏湖動力船規制開始 |
2007(平成19)年11月 | 近代化産業遺産群33に山線機関車、山線鉄橋等が指定(経済産業省) |
2014(平成26)年4月 | 支笏湖温泉第2泉源開湯 |
2014(平成26)年9月 | 大雨災害 温泉地区住民に避難勧告 国道453号約1か月通行止め |
2014(平成26)年12月 | 千歳市支笏湖ヒメマスふ化場新築落成 |
2016(平成28)年12月 | 支笏湖神社本殿修理・遷座 |
2018(平成30)年2月 | 氷濤まつり40回記念イベント 支笏湖青の祭開催 |
2018(平成30)年11月 | 山線鉄橋が選奨土木遺産に認定(土木学会) |
2020(令和2)年1月 | 王子軽便鉄道ミュージアム山線湖畔驛オープン |